下山の思想 読了
登山は登るのが目的ではなく、無事に下山することが大切。
その思想をもとに、どう下山していくか?という話が書かれています。特に、3.11があった後にでている本なので、その目線が非常に強くなっている感じがします。
物事をなしていくのに、何かを達成するまでが目的として描かれ、そこまでが美談的に扱われている成功談が多々あります。
何事にも、物事を成し遂げた後、どのように維持していくか?さらに成長させていくか?というのが求められます。
ただ、達成したという慢心感からうまくいかなかったりしますし。維持していくというのが難しい。慢心感を取り除くために、一度冷や水を浴びせるか、冷静に現状を捉えていくというのが大切なんでしょうねぇ。
本書の中で、次のようなことが書かれています。
急坂を登り、重い荷物を背負って頂上をめざすとき、人は周囲を見回す余裕はない。必死で山頂をめざすことに没頭しているからだ。
しかし、下山の過程は、どこか心に余裕が生まれる。遠くを見はるかすと、海が見えたり、町が見えたりする。足もとに咲く高山植物をカメラで撮ることもある。こんな高い場所にも、こんな花が咲くのかと驚く。岩の陰から顔を出す雷鳥に目をとめるときもある。
一歩一歩、足を踏みしめ安全に下りていきつつ、自分の人生の来し方、行く末を思うこともあるのではないか?
読んでみると、がむしゃらな時期が終わって、ほっとしたときに見えてくる風景を満喫しつつも、冷静に現状を捉えて、次の手を打つないしは次の手の準備をするというのが必要なんでしょう。
今の現状を成熟した世の中と考えれば、下山の過程に入っており、ここからは文化の成熟や現状を冷静に捉え、次の成長への準備に入ることが大切ということなのでは。
ただ、がむしゃらでやっている時期は楽しいんですよね。目標も一つだし、周りが見えているものもほぼ同じだしで。ただ、その時期が終わると、目標がばらばらになってしまう。
多様化とマスコミはいうけれども、多様化という言葉が出る時点で、下山の領域に入ってきているんだろうと思います。
だからこそ、この多様化な状況を把握し、次の成長への道筋を作るというのが大切なんでしょう。ただ、簡単に言葉に書くけれども、次ってどこだろ?ってなってしまいますが。。。