スーパーコンピュータを20万円で創る/伊藤智義 ~自分の望むものは自ら生み出す気概がいるということですね~
たった20万円で天文学の数値計算を解くためのスーパーコンピュータを作るという物語。読んでて非常に面白いし、ぞくっとした。
スーパーコンピュータを借りると多大な金額がかかる。それをクリアするために、自前で用意する。そのスーパーコンピュータを創る理由がいい。
自らの解きたい問題を解くために必要なものが世の中に存在しないのなら、自分たちで作るしかないのではないか。そういう思いがその理論天文学者をつき動かした。
一番ほしいものは、自分で作り出す。この気概がすごい。なかなかこの判断ができる人はそういないと思う。
一般的に、分子動力学の問題を解くときには、非常に計算コストがかかります。一般的なPCではそこそこの問題が解けますが、心臓の動きや化学反応、気象現象をシミュレーションしようとすると、スーパーコンピュータでものすごい時間がかかる。1ヶ月とか2ヶ月レベルで。そうなると、費用も多大にかかるし。。。
その中で、計算速度を落としても開発したスーパーコンピュータがあれば、研究はどんどん進めることができる。つまり、最適な方法をあきらめて、現実的なことでできることからやっていく。
「完全主義にこだわるのをやめると、新しい道が見えてくる」
その経験が同じ時期に目にした広告と結びついて、「ハーフ・フル」という考え方が杉本の心に残ったという。「半分では不十分」といつまでも完全主義にとらわれていると、一歩も前に進めなくなる。「半分もあれば十分」と完全主義を捨てたとき、肩の力が抜けて、かえって大きな前進がもたらされるという考え方だ。
この考え方が、物事を前に進めていったのだと思わされます。
研究がある程度進みだした以降に、各々が自由に動き出したといわれるのですが、お互いの力を認めているからこそ、自然とチームワークが発揮されている気がします。
本当のチームワークとは何か?
それはきっと、なれ合いでもなければ助け合いでもない。
~中略~
各パートの激しい自己主張。それでいて不思議と調和は崩れていない。それは互いに実力を信じあっている上での自己主張だったからではないかと思うのだ。
自分を振り返ってみると、自前でスパコンを作るんだと、ここまでの気概をもったことがあるか?と言われると、ないな。。。というのが事実。
1から10を生み出すというのは、途中までは既存の研究の延長線上にあることが多く、ある程度の道筋が見えることがある。ただ、延長戦の行き止まりにたどり着くと、そこからが地獄となりますが。。。
でも、ゼロから1を生み出す。これは、最初から道筋はない。誰もしてないから、たくさんの失敗があるからこそ、でてくるところもある。
自分は、いま、このくらいぞくっとする仕事をやっているんだろうか?調整とかで疲弊していないのかな?もっと、仕事を楽しんでゼロから1を生み出せるようにしないと。
世界初なんてやる必要はなく、会社初でもいいのかなと。誰もやってないからこそ、価値があると思って、チャレンジをしていかないと。
と、ふと思わされました。
目の前に立っている問題なんて、やりたいことに対してみれば大したことのないものと思えてくるくらい、どこか力をもらった書物です。
最後に、自分ならミクロの計算ができたら、よりマクロの計算をするために、マクロ計算式を作ります。それを作れば、大規模な計算をすることができるようになりますから。
ただ、それが簡単なようでいて、非常に難しいことになるんですけどね。。。
特に、実際の現象と仮想状態とのすり合わせが。。。