汽水。
あまり聞かない言葉ですが、海と川が混ざるところ。
この河川が海に流れ込む汽水域があるからこそ、豊富な魚の環境ができている。その要因は、植物プランクトンが豊富にいるから。
河川水が流れ込む海とそうでない海とでは植物プランクトンの発生量が約30倍から100倍も違う。これはそのまま魚介類の漁獲量のちがいだと思っていい。
〰中略〰
この差は川から海に供給される鉄分の量によるという。光合成生物にとって鉄分は必須のミネラル成分だ。まず、鉄は光合成をする葉緑素(クロロフィル)の生合成に不可欠、呼吸系等に不可欠な成分である。
この汽水域を、気仙沼、有明、四万十川、富山などを巡って、そこの状況について書いてます。
特に、印象的なのが四万十川と富山の話。
四万十川の汽水域のおかげで、土佐湾は豊富な漁場となっており、クジラが住み着いている。だから、ホエールウォッチングができる。
四万十川が鯨を呼んでいる
と、本書内で書いてあるが、まさにその通りだと思います。
富山湾のその地形自体が特殊で面白い。富山の魚がおいしい理由がわかった気がします。
富山湾の地形的特徴は、海岸から一気に海底深く落ち込んでいる。最深部は1250mもある。背後には3000m級の立山連峰を控え、その雪解け水が多数の川を流れて湾に注ぐ。当然ながら河川水と海の植物プランクトンの発生には大きな関係がある。
さらには、湾の海底から地下水が湧き出ており、その水は10年から20年かけて山から下りてきているという。この地下水が豊富な栄養をもっており、植物プランクトンや動物プランクトンが豊富に発生するため、富山湾は好漁場となっている。
こういう風に読んでいくと、河川と海の密接な関係がある。さらには、河川の豊富な栄養は、森の中にある腐葉土で、ゆっくりと水を蓄えられたものが染み出してきたもの。
だから、森を大切にしないと、海の魚の漁場を守ることができない。しかも、森を大切にするには、海に注ぐ川の周辺が大事だということがわかります。
少し前に読んだ本で、CO2低減には植樹と書いてあり、場所は砂漠とか緑化が終わっていく場所という風に書いてました。でも、生態系を守るという観点からいけば、まずは今の生態系を守っていくためにも森を大切にしていき、そこから新しくというのが大切なのでは?と思えてきます。
それが地球の生態系を守ることになるわけですから。
こういう活動もあるみたいです。
こう見ると、森を大切にするということがいかに大切なのか?というのがわかる気がします。
最後に、あとがきで東日本大震災でやられた海がどうなったのか?というのも書いてましたので、それについて少し引用。
顕微鏡を見ていた研究者がこう語った。「牡蠣が食いきれないほど
プランクトンが発生しています」それはまさに天の声であった。
〰中略〰
”森は海の恋人”これはまさに金言です。津波の被害値は主に埋立地です。川や流域の森に被害はありません。森からは安定して養分が注いでいます。海が攪拌され有機物があがってきました。泥が沈めばチッソやリン等の養分が残ります。そこに森から鉄分が供給されれば光合成で植物プランクトンが道理です。背景の川の流域を保全していたことが海の回復を早めました、と説明されたのである。
森の保全ということがいかに大切か。離れたところの話と思っても、つながっている。そういう意味でも面白いものだと思います。