日本軍の太平洋戦争時の戦いぶりをもとに、組織論を書いてます。
事例としてあがっているのが次の6つ。
戦争の経緯は、あんまり書く気がないです。基本日本軍が負けていく話というのもありますが、内容的には少し悲惨的なところもありますから。
日本軍の欠陥
結局のところ、日本軍の欠陥ともいえるのは次のこと。
日本軍の失敗の本質とは、戦略的合理性異常に、組織内の融和と調和を重視し、その維持に多大のエネルギーと時間を投入せざるを得なかった。このため、組織としての自己革新能力を持つことができなかったのである。
この中で自己革新とは次のような能力のことです。
組織が継続的に環境に適応していくためには、組織は主体的にその戦略・組織を環境の変化に適合するように変化させなければならない。このようなことができる、つまり主体的に進化する能力のある組織が自己革新組織である。
~中略~
適応力のある組織は、環境を利用してたえず組織内に変異、緊張、危機感を発生させている。あるいはこの原則を、組織は進化するためには、それ自体をたえず不均衡状態にしておかなければならない。
日本は現状の組織を維持するために、汲々としてしまい、その維持のためだけに力をつかってしまっていた。
つまり、外に向かう前に、内部での調整に時間や労力を使ってしまい、外に向かう頃には、タイミングを逃すか、それとも、力が尽きかけている。
闘う前に、すでに負けが決まっているも同然の状況。。。
戦略への固執
それに加えて、敗戦への経緯を見ていると、一つの戦略に固執したり、戦略がくるっていると、ここまで悲惨なことが起こるのか。。。と愕然とさせられます。
本来、戦術の失敗は戦闘で補うことはできず、戦略の失敗は戦術でおぎなうことはできない。とすれば、状況に合致した最適の戦略オプションのなかなから選択することが最も重要な課題になるはずである。
と、本書の中で書いてあるのを見ると、戦略は複数用意しておいて、そこから選んでいくというのが必要なのであると。
その時々の環境や状況で、戦略の評価は変わってしまう。それなら、あらゆる状況を事前に可能な限り想定しておき、その中で戦略を練っておく。そういうことが必要なのかもしれません。
文字に書くと簡単だけど、実際に状況を想定するとなると、かなりのバックボーンが必要となる。いや、それ以上に想像力というのが必要になる。
こういう風に考えていくと、アンテナを幅広く広げておくというのが肝なのかも。
戦略のまずさ以上に問題なこと
戦略狭さ以上に問題となるなと思ったのは、次の2つ。
- 命令があいまい
- 失敗を繰り返す。
この2つが重なると、致命的すぎる。。。
命令があいまいだと、各人に配慮が入り、統合的な行動がしにくくなる。いうことを聞かなくなる部隊もでてくる。結果として、作戦が失敗したり、傷を深くする。
これは、現場を見ていない、現実をしっかりみていない人が指示を出しているのも、命令があいまいになる一因。
あとは、同じパターンを何度も繰り返して、失敗を繰り返す。現実を受け入れることができていないかったり、過去の成功体験にとらわれていることが一因。
失敗をしたなら、作戦を練り直すか、対策をいれて対応をする。こういうのがあらゆる状況に応じて、対応していくことを可能とすると考えられます。
いろいろと考えていくと
上記の内容を考えていくと、次のことが大事なことのように思えてきます。
- 的確な命令
- 同じ失敗を繰り返さない(起こしたら、対策を盛り込む)
- フレキシブルな状況判断(現場での状況を把握)
- 複数の状況を想定して、複数の戦略策定
- 内部での争いなのではなく、方向性を同一にする。
- 人情論で物事を判断しない。
上記に加えることがあるとすると、結果で判断をすべき。プロセスや意気込みだけで判断してはいけない。ということでしょうか。
耳が痛いことが多々。ただ、それ以上に非常に勉強になったいい本でした。
またタイミングを見て読み直してもいいと考えてます。
- 作者: 戸部良一,寺本義也,鎌田伸一,杉之尾孝生,村井友秀,野中郁次郎
- 出版社/メーカー: 中央公論社
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