日本はなぜ日露戦争に勝てたのか/瀧澤中 ~一般的に言われていることをもう一歩踏み込んでみないとわからないことが多いですね~
日露戦争で、日本が勝ち、その成功の復讐で日本が太平洋戦争でぼろぼろに叩きのめされた。
戦争のハイライトだけみていると、秋山兄弟や乃木希典、東郷平八郎や児玉源太郎などの軍人が活躍することで、勝てるはずのなかった日本がロシアに勝利したというのがよくいわれますし、坂の上の雲でもそのような記述になっている気がします。
この本は、それに対して反対してます。
準備を徹底的に行い、さらに情報を十二分に活かし、そして、前線に立たない人も含めて全力で事にあたったというのが重要であると。
どんなに重要な情報を得ていても、それを活かすことできないとダメです。明治時代の人たちは、さんざん悩みぬいて、ほかの手立てを打ったうえで、勝負に出た。しかも、勝機を見いだしながらの作戦を練って。
執念のような準備の遠因にあったのが、薩英戦争や下関戦争の手痛い敗北。このつらさが、負けたらやばいことになるという想いがあったからこそ、執念のような忘れずに準備できたということ。
さらには、一文無しに近い明治政府が、どうして戦艦を複数持てる財政状態にしていったのか?など考えたこともなかった視点で書かれています。
そして、この本を読んで思ったことの一つとして、各人が同じ方向を向いて、がむしゃらに国のために働くということ。これが大切なのではないでしょうか。
組織の規模が大きくなり、効率的に物事を進めていくためには、セクションをつくり、細分化+効率化をしていくというのが求められていく。それが各セクションの利益追求に向かわせ、セクションで認められるものが出世し、全体を見て行動できるものが迫害を受けるようになると、大事な歯車が狂い始めるということなのでしょう。
そう、成功体験の復讐が始まっていく。
そうならないためにも、各人がプライドをもち、全体的な視野をもちつつ、責任感をもってことにあたるということが重要。
会社が、国家が、危機であるときこそ、男子ならば決然として立ち、すべてを捧げるという人材に任せるべきです、結局尊敬され、人を動かしうる人物とは、自らを捨てて公に尽くせる人物ではないでしょうか。
最後に、勝利というものの定義。
みなさん、勝利とは何でしょうか。
結局、負けないための手を打ち尽くすことが、勝利なのではないでしょうか。
時の運、地の利、それはありましょう。
しかし、運というものは、勝つ準備のない者には訪れないことを歴史は物語っています。
ただ、負けてもそれを糧にできればいい。
負けることは良いことではありません。
しかし、負けたことは必ず生きてきます。
負けた経験があるからこそ、負けない努力を真剣にするのです。
私たちはこれからも、自分の国よりも大きな国と、戦争ではなくとも経済や外交の分野で戦わねばらないでしょう。
この本を読んでて思ったのは、各人が全力をもって物事にあたっていく姿を見ると、うらやましいという感想がでてきます。
司馬遼太郎作の「坂の上の雲」が読みたくなります。ただ、その準備に追われているところ(最初のほう)に注目しそうですが。。。
高橋是清って人はすごいな。。。