火山で読み解く古事記の謎/蒲池 明弘 ~視点は面白いんですよけどね。。。~
古事記や日本書紀は、一時期読んでいたことがあります。日本の歴史という点において、原点ということもできます。
個人的に、この古事記や日本書紀の解釈は、日本の歴史はもとより、編纂時の政治的事情や中国や欧州の知恵というか伝承が伝わってきたものがミックスされたものである可能性が高いと考えていましたが、この本を読んでて、火山が影響をあたえるというのは面白い目線もあるなというのが感想です。
さまざまな分野の人たちが早くは戦前から、火山の視点により古事記や日本書紀にしるされた神話を読み解く論考を発表しています。
火山という人知の及ばない力で与えられる影響が、当時の政治に影響を与えないわけがなく、そこを起点に読み解くというのは面白いなと。
この本で注目しているのは、九州と紀伊山地。
特に九州では、阿蘇カルデラ、霧島火山群、姶良(あいら)カルデラ、阿多北カルデラ、阿多南カルデラ、鬼界カルデラと多くのカルデラ多々。
カルデラがあるということは、火山の噴火活動があったわけで、その噴火の規模は尋常ではない。特に鬼界カルデラは7300年前となるので、日本だと縄文時代あたりの時期。
ただ、ここの火山活動と古事記の叙述をくっつけるのは困難かなと。古事記が編纂されたのが712年。このときに書かれている内容に影響を与えるのがどうかとなると、200、300年の話が限界なのでは?と思うんです。お祭りとかで続いているようなのを考えると、どうだろう。1000年くらいが関の山かなと。
そうなると、712年のころに対して、1000年前と考えると、紀元前300年ごろ。こう考えると、鬼界カルデラの爆発がどんなに影響が大きくても、さすがにつながらないと思うんですよね。
解釈の根底がずれている感じがするので、ちょっと難しいなと思います。
火山をつなげていくのであれば、富士山の噴火をつなげたほうが現実的じゃないかなと。
富士山の噴火史で考えれば、482年ごろ噴火とあるので、影響を与えたと考えるのが当然かと。あとは、阿蘇山も553年ごろ噴火したそうですし。。。
そういうのを思うと、そちらの線で考えたほうが現実的じゃないかと思うんです。
ただ、火山というものすごいエネルギーのことを考えると、そういうことを考えたくなる気持ちもわかりますが。。。島原とか雲仙普賢岳の影響で大変な目に何度もあっていますし。。。
本書に関しては、面白いなというのもありますが、事実的な伝承という観点から考えていくと、きついなというのが素直な感想です。
こういう考察本は読んだ後も、正しいのかどうなのか?をいろいろと考えたり、調べたりできるので結構好きなんですけどね。。。