非対称情報の経済学―スティグリッツと新しい経済学/薮下 史郎 ~経済学の世界は奥が深い~
経済学は完全な情報を共有している中で物事が成り立つという仮定の中で立てている場合が多い。
市場メカニズムによって達成されるのは効率的な資源配分の実現だけであり、それによって公平な所得分配が達成される保証はないのである。
ただし、情報と言うのは基本的にもっている、もっていないで大きな差を生む。この差がどの程度影響を与えていくか?というのを書いたのが非対称情報の経済学。
非対称情報の下では、価格が低下したとしても、品質の悪化を懸念するため、誰もその商品を受容しなくなる。この結果、市場が存在しなくなる。
売り手と買い手の情報に差があることで、最適な状態にはならない。
例えば、ネットでの売買では、どうしても情報が抜け漏れすることがあり、売り手優位な状況になってしまう。
ただ、この情報の差というのが進みすぎると、買い手と売り手のどちらかにモラルハザードが生じる。
たとえば、自動車保険で保険をあてにして無茶な運転とかをして事故を起こす人がでてくるなどの。保険会社側は、最初にそういう運転をする人とは知らずに契約を結ぶこともあるわけですから。その結果として保険会社は保険料をあげていくとなると、事故を起こさない人達が損をするようになっていく。
保険料の上昇とともに、リスクの小さい良質な加入者が保険市場から撤退し、リスクの大きな加入者だけが残る現象は、「逆選択」または「逆淘汰」と呼ばれている。
そうならないようにと手をうっていくんでしょうが、相手もあるものでなかなか難しそう。
ナッシュ均衡とは、他の人たちが選択を変えない限り、だれも自分の選択を変えようとはしない状況である。
ナッシュ均衡状態では、どの選択肢も自分の戦略変更によって変えられない。そうなると、お互いが牽制しあい、動けなくなる。
そして、現状のキープという状況に陥ってしまう。
こういうのを知ると、情報というのがいかに大事なものかと思わされます。今後の世の中、IoTやらビッグデータとかにもつながっていくのを考えると、なおさら情報の価値というのがあがっていくのではとも。
そう思うと、情報というのをいかに効率よく集めるか?それをいかに活用するか?というのが大事なことになっていくんだろうなぁ。

非対称情報の経済学―スティグリッツと新しい経済学 (光文社新書)
- 作者: 薮下史郎
- 出版社/メーカー: 光文社
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